句集 山笑う

句集の刊行を決意したのは2025年、手術直後の病床であった。生きた証として俳句を残したいという思いから、句作を見直し編集を進めた。タイトル「山笑う」は春の季語で、「病癒えて歩む宮跡山笑う」に由来する。
本句集では、俳句に親しみのない読者にも読みやすい工夫を施した。表記は現代仮名遣いを採用し、常用外漢字にはふりがなを付した。また旅行句には簡潔な前書きを添え、なじみの薄い季語には解説を付した。巻末には季語索引も備え、俳句を読みながら季語をたどる楽しみも味わえる。
| 著 | 住友ゆうき |
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| 判型 | 四六判頁:208 |
| ISBN | 978-4-434-37850-8 |
| 発行 | 2026年4月 |
| 定価 | 2,750円(本体2,500円+税)
在庫:○
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私が初句集をつくることを決心したのは、2025年6月、脳腫瘍の手術をうけた直後である。全身麻酔の影響でまだ頭がぼうっとするなか、病室のベッドに横たわっていると、なぜか句集を出さなくてはという思いが浮かんできた。それ以前にも刊行を考えたことはあったが、夏井いつきさんいうところの「凡人俳句」を公表するためらいがあった。しかし手術をうけて、長短いずれであれ、余命に限りあることがわかったのだろうか。出来の良し悪しにかかわらず、生きた証のひとつを書き留めたいという気持ちが強くなったのである。
さいわい手術後の経過は良く、予定を早めて退院した。七月からリハビリメニューをこなしつつ、句集の編集にとりかかった。いまも共同研究に参加して論文を書いたり学会発表を行ったり研究活動を続けているので、その合間を縫ってということになったが、編集は過去のスナップ写真の整理をするようで楽しい作業であった。日常の出来事、旅行や吟行の足跡など、俳句が「季語を用いた生活記録」であることを実感した。
しかし、予想以上に時間がかかることがわかった。2000句ほどのストックがある俳句ノートから、気にいったもの、句誌や句会で評価を得たものなどを中心に、400句を目途に選ぶことにした。しかしその際にどうしても手を入れたくなる句が出てきて、あれこれと思案してしまう。選句は推敲の場になってしまった。
時間がかかったもうひとつの理由は、出版費用の節約のため、ほぼそのままで印刷・製本できる完全原稿をワープロソフトの「ワード」で作成する方針をたてたからである。大学生向けのテキストをこの要領で作った経験はあるものの、所定の文字サイズやレイアウトで、しかも慣れない縦書きで入力しなければならず、手間がかかった。そんなわけで一年近くを要したが、ここに何とか刊行にこぎつけることができた。
- さえずりや朝はまだ鳥たちのもの
- 春の旅終えし雨夜のショパンかな
- 梅雨明けや寄席の提灯百こえて
- 初西瓜沖ゆく船の白々と
- 紫陽花や出棺に傘差しかけて
- 山寺の一千段を行けど霧
- あめんぼの動き将棋の桂馬に似
- 若葉して長椅子硬き無人駅
- 近未来都市に舌だす青とかげ
- 初雪やじょんがら節の撥つよく
- 身を国に捨てたくはなし秋刀魚食う
- 病癒えて歩む宮跡山笑う
- 序
- 凡例
- 編集後記
- 季語索引






